差別を爽やかに振り払え!!今更だけど15年前の直木賞受賞作「GO」を読む

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金城一紀直木賞を受賞した小説「GO


は、主人公の在日朝鮮人杉原李が日本人の女の子桜井椿に恋をする物語です。2001年に映画化され大ヒットしその年の映画賞を総なめにした作品です。
※杉原は在日朝鮮人(北朝鮮人)から韓国の国籍を取り在日韓国人になります。やはり、朝鮮籍よりも韓国籍の方が何かと都合が良いのでしょう。

主人公の杉原は在日朝鮮人として育ち朝鮮人の通う学校いわゆる朝鮮学校の中級学校(日本の中学校に当たる)に通っていました。しかし、そのまま朝鮮学校の高級学校に入らず、受験して日本人が通う一般の高校に入学しました。

そこでの日本の学生との様々な軋轢も描かれています。もちろん日本人の友達もできますが。本書の裏面のあらすじにも書いてあるように、「軽快なテンポとさわやかな筆致で差別や国境を一蹴する、感動の青春恋愛小説です」。

杉原は桜井に自分が在日韓国人であることを明かさずに付き合いを重ねます。しかし、杉原は桜井とホテルで寝ようとする時、自分が在日韓国人であることを告白します。父に子どもの頃からずっと「韓国とか中国の男とつきあっちゃダメだ」(p188)と言われていた桜井は、杉原と行為をすることを拒否します。杉原はそのことにショックを受けホテルを後にし桜井と別れます。


しばらく時が経ち、杉原は高3になりクリスマスイブの日が来ます。その日、杉原は桜井から電話でデートをしたあの小学校に来てという連絡を受けます。

そして、桜井と杉原は再会します。

杉原は桜井の目の前にひざまずき、こう叫びます。

「別にいいよ、おまえらが俺のことを≪在日≫って呼びたきゃそう呼べよ。おまえら、俺が恐いんだろ?何かに分類して、名前つけなきゃ安心できないんだろ?でも、俺は認めねえぞ。俺はな、≪ライオン≫みたいなもんなんだよ。≪ライオン≫は自分のことを≪ライオン≫だなんて思ってねえんだ。お前らが勝手に名前をつけて、≪ライオン≫のことをよく知った気になってるだけなんだ。それで調子に乗って、名前をを呼びながら近づいてきてみろよ、お前らの頚動脈に飛びついて、噛み殺してやるからな。分かってんのかよ、おまえら、俺を≪在日≫って呼び続けるかぎり、いつまでも噛み殺される側なんだぞ。悔しくねぇのかよ。言っとくけどな、俺は≪在日≫でも、韓国人でも、朝鮮人でも、モンゴロイドでもねえんだ。俺を狭いところに押し込めるのはやめてくれ。俺は俺なんだ。いや、俺は俺であることも嫌なんだよ。俺は俺であることからも解放されたいんだよ。俺は俺であることを忘れさせてくれるものを探して、どこにでも行ってやるぞ。この国にそれがなけりゃ、おまえらの望み通りこの国から出てってやるよ。おまえらにはそんなことできねえだろ?おまえらは国家とか土地とか肩書きとか因襲とか伝統とか文化とかに縛られたまま、死んでいくんだ。ざまあみろ。俺はそんなもの初めから持ってねえから、どこにだって行けるぞ。いつだって行けるぞ。悔しいだろ?悔しくねえのかよ・・・・・・。ちくしょう、俺はなんでこんなこと言ってんだ?ちょくしょう、ちくしょう・・・・・・」
p245〜246

この叫びに差別される側である「在日」の本音や苦しみが詰まっていると思います。

本作では在日に対する日本人の「差別」も明るいタッチや暗いタッチでいろいろ描写されています。

在日韓国人朝鮮人は、まず人格を見て評価されません。韓国人、朝鮮人であることでその人の全てを否定されてしまうのです。ヘイトスピーチなどはそれに当たります。
日本のネット右翼は、在日=反日、在日=低脳、暴力的等々。一括りに語ります。


在日韓国人朝鮮人などについていわゆる「在日特権」などの批判もあり、全てを擁護したり全面的に同情する気はありませんがやはり「差別」はダメでしょう。

国籍などで差別される側の気持ちに立てば、杉原の気持ちも理解できるのではないでしょうか。

「おまえらは国家とか土地とか肩書きとか因襲とか伝統とか文化とかに縛られたまま、死んでいくんだ。」
ここに韓国人・朝鮮人であるだけで、何人かだけでとやかく言われる、差別される苦しみが表れています。

私も、日本人であるだけで差別されたら、杉原のように「俺は俺なんだ」と言いたいです。
俺を見て評価してくれと。いろんなしがらみにとらわれず、俺という人類の中の何人とか超越した一人の個性真理体として見てくれと。ちゃっかり某宗教団体の教理の用語が入ってしまいましたが。

他者の気持ちを考えて、言葉を選ぼう。反日嫌韓や在日差別で答えるのではなくて。なんてありきたりのことしか言えませんが。仲が悪くても、隣国だからと言って仲良くする必要はない、と言う人もいますが、仲が悪いよりも良い方がいいに決まっていますから。


ネトウヨもこれを読めば、少しは違う国の人の立場にたって物事を考えられたりして。

ということで、在日についても考えさせられる上に展開も早く飽きないので面白い!!オススメの一冊です。